お疲れさまです、bashi(@bashilog0224)です。
おすすめの本などで必ず出てくる名作、森絵都『カラフル』を読みました。
読書を習慣にしたくて最初に読んだ本で、何度も読み返しています。
著者の森絵都さんが児童文学賞を受賞してい作家なので、子供向けと思いきや大人にこそ読んでほしい作品です。もちろん10代ならもっと共感できるでしょう。
ずっと長く愛されている作品です。
とても読みやすく、じんわり優しいストーリーも大好き。いい本ない?と聞かれたら必ずこの一冊を選びます。
森絵都『カラフル』読書感想です。
『カラフル』作品情報とあらすじ
一度死んだぼくは、天使業界の抽選に当たり他人の体にホームステイすることに。そして気がつくと、ぼくは小林真だった…。デビュー20周年、新しくて、温かい、もう一度読み返したい森絵都作品。
「BOOK」データベースより
- 疲れていて優しくなりたい
- 読みやすい本がいい
- 最近色を感じていない
主人公を取り巻く中にいじめや援助交際や不倫などのヘビーな題材もありますが、コミカルに描かれているので重くなりすぎないです。プラプラのキャラもいい感じ!「ぼく」は無事ミッション達成となるのか?読み始めから引き込まれます。
以下ネタバレ注意
『カラフル』感想
人は自分でも気づかないところで、誰かを救ったり苦しめたりしている。
この世があまりにもカラフルだから、僕らはいつも迷ってる。
どれがほんとの色だかわからなくて。
どれが自分の色だかわからなくて。
森絵都『カラフル』187p
読んでいるうちになぜか、今まで自分に関わってきた人のことを思い出し、通勤の電車の中だというのに読んでいるうちに涙がこぼれそうで。
悲しい訳じゃなくて不思議な涙。この作品が持つ優しさに触れたからだと思います。
主人公の「ぼく」の葛藤に、思春期真っ只中の中学生はもちろん、大人もその頃の自分に重ね合わせ共感して胸がキュッとなります。
花や鳥のような鮮やかな色、泥や岩のように沈んだ色、人間はいろんな色を持っています。だからこそ世界はカラフルだし、その色の中に埋もれてしまうこともある。
もっと早く、たとえば真と同じ中3の時にこの作品を読んでいたら、間違いなくその後の人生に影響を与えていたでしょう。
真の体を借りた「ぼく」の心の動きに、その時の自分の中で何かしらの”気付き”があったはずです。
今思えば、思春期に持っていた自分でも理解できない感情。今思えばカラフルすぎてトゲトゲしかったんでしょうね。常に何かにイライラしているような。
「ぼく」のまわりで起こる性・家族・友だちに関する、誰しもが抱えるようなモヤモヤに親近感がわきます。
大人からすれば小さいことでも、中3の真にすれば、自ら命を断ってしまうほど強大な闇なんですよね。
その闇を、誰も信じられず一人で抱えてしまう真。
でもその真の体を借りる「ぼく」が人間には様々な色、多面性があることを感じて変わっていく。
自分の中にも色はあり、まわりにも色があります。1色ではなく、カラフルなんです。ラスト、真の魂だとわかったとき、「ぼく」だった真は「関わった誰か一人でも欠けていたらもどれなかった」と思い返します。
過去の真が見ていたものは1色だけだったんです。自分のことも周りの人のことも。
生き直しをしていく中で混ざり合う家族の優しさ、友だちの優しさ。たくさんの色と混ざり合います。
自分を見てくれている人がいることがわかって変わっていく「ぼく」の意識に、読み手がシンクロして読んでて心地いいんですね。
真の気持ちを純粋に代弁する「ぼく」の叫び
印象に残った、真の気持ちを思いながら「ぼく」が涙ながらに家族に思いを打ち明けるシーン。
「僕が高校でしたいのは、そういう、めちゃくちゃふつうのことなんだよ」
森絵都『カラフル』198p
当たり前のことができなくて悩んで、他人は簡単にできることでも努力をしないとできない人もいる。
楽観的に生きているように見えて悩み続けてる人だったり、恵まれた環境にいても心が満たされない人だったり、人それぞれ色があって、もちろん自分にも色がある。
当たり前のことができなくて悩んで、他人は簡単にできることでも努力をしないとできない人もいる。
楽観的に生きているように見えて悩み続けてる人だったり、恵まれた環境にいても心が満たされない人だったり。
真の人生をやり直している「ぼく」だからこその心の叫びが胸を打ちました。置いてきぼりの中、立ち止まって振り向いてくれた早乙女くんと一緒の高校に行きたい、そしてふつうのことがしたいんだと。
なんて純粋な叫びなんだろう。
自殺を選んでしまった過去の真からの決別ののろしですね。素直に感情に乗せて言いたいことを言う、それができなかったから真は闇に飲まれてしまった。
生き直ししている真の魂は、人と色に心を動かされ、精一杯生きようとしているんですよね。
実写とアニメで映像化もされている
日本とタイ(!)で実写化されています。日本版の主人公は元KAT-TUNの田中聖です。
実写版はこの記事を書くときに見つけて初めて知りました。
下の動画はタイ版の予告編。設定が違うみたいですが興味あり。
アニメのタッチが世界観にぴったりですね。こちらのほうがそそられます。見てみよう。
映像だとまた違った印象になるんでしょうね。プラプラが可愛い!これは見なくては!
おわりに
紺色のダッフルコート・つややかな桃色・銀灰色の校舎・・・タイトル通り文中に色の名前が所々に出てきて、単色の紙のページが色づくような文章。そういった点も楽しんでほしい作品です。
読書を始めたいならピッタリの一冊です!
ふと悩んだときは、プラプラの言葉を思い出すようにします。
人生はせいぜい数十年、少し長めのホームステイ。思春期の頃より色は減ってしまった気はしますが、今の自分の色を大事にして、気楽にカラフルな世界を楽しんで生きよう。
もちろん、関わる人が持っているいろんな色も楽しみながら。
それでは、bashi(@bashi_bashilog)でした。
コメント
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そもそも「人間の色」とはなんですか